GPS発信機は、離れた場所にいる人や物の位置をスマホやパソコン、タブレットなどの端末上で確認できる通信機器です。最近では、子供・高齢者の見守りや車・バイクの盗難防止、社員の業務管理などの他、スポーツやイベントといったさまざまな場面で利用されています。位置がわかるということの他に、どのような機能があるのか、どのような場面で使えるのか、気になる方も多いでしょう。この記事では、GPS発信機の主な機能やGPS発信機の活用方法について、わかりやすく解説していきます。
GPS発信機とは
GPS発信機とは、GPS衛星(人工衛星)から電波を受信して現在の位置を割り出し、その位置情報を携帯電話の通信網などを利用してサーバに転送し、離れた場所にいる人のスマホ・パソコンなどで閲覧できる通信機器です。GPS衛星から発信された電波が地上に到着するまでの時間によって、位置が特定できるという仕組みです。
GPS発信機を使って位置情報を取得する流れは、次の通りです。
- GPS発信機を起動する
- GPS発信機を持って対象者が移動する(GPS発信機をつけた対象物が移動する)
- GPS衛星の電波を受信して、位置情報を測位する
- 位置情報を携帯電話の通信網などを使ってサーバに転送する
- 手持ちのスマートフォン・パソコン(※)などで専用アプリ・サイトを開くと、地図上に対象者(物)の位置が表示される
※インターネット通信ができれば、特別な受信機は不要
GPS発信機とGPSロガーの違い
GPS発信機は、
上記のような仕組みによって、取得した位置情報をリアルタイムで遠隔地の端末に発信します。一方、GPSロガーは取得した位置情報をGPS本体に記録していくのみで、発信する機能はなく、位置情報を確認するにはGPSロガー本体の情報をパソコンで読み取る必要があります。GPSロガーは、リアルタイムで現在地を知る手段ではなく、記録された履歴から行った場所・日時・経路を確認する手段です。
GPS発信機とGPSロガーの機能比較表
| GPS発信機 | GPSロガー |
リアルタイムでの確認 | ◯ | ✕ |
履歴の保存 | ◯ | ◯ |
スマホでの確認 | ◯ | ✕ |
圏外での位置情報取得 | ✕ | ◯ |
複数人でのデータ共有 | ◯ | △ |
GPSロガーは、圏外エリアでも位置情報が記録できるという点が大きなメリットです。位置情報を複数人で共有することは、GPS発信機ではリアルタイムで可能です。GPSロガーの場合は、GPSロガー本体からパソコンで読み取ったデータを第三者に送付することで共有できます。
位置情報の通信方式
GPS衛星から取得した位置情報を発信する通信方式には、携帯電話の通信回線を使用するタイプと無線機の電波を使用するタイプがあります。
2つの通信方式の大きな違いは、カバーするエリアです。
携帯電話の通信回線は、具体的には大手キャリア3社( NTTドコモ・au・ソフトバンク)の回線を指し、日本全国での利用が可能です。一方、無線通信が利用できるのは、1kmから10km以内の限定的なエリアのみになります。
物流倉庫内やイベント会場などの限られたエリアや、山間部など携帯電話の電波が圏外になるエリアでは、無線通信を使ったGPS発信機の利用が有効です。
また、GPS発信機を利用するには、購入とレンタルの2つの方法があります。
使用目的や期間によって、検討するのが良いでしょう。
GPS発信機の主な機能
GPS発信機で何ができるのか、主な機能は次の通りです。
離れた場所にいる人・物の位置がスマホやパソコンでわかる
リアルタイムで位置を自動追跡できる
それぞれについて詳しく解説します。
離れた場所にいる人・物の位置がスマホやパソコンでわかる
GPS発信機を持った人(発信機をつけた車・荷物など)の現在の位置を、離れた場所にいる人がスマホやパソコン上で確認できます。
位置情報の確認に特別な受信機などは必要なく、インターネット通信ができるスマホやパソコンなどの端末があれば専用サイト・アプリを開くだけで、地図上に位置が表示されます
リアルタイムで位置を自動追跡できる
リアルタイムで対象者(物)の位置を自動追跡し、現在の居場所を表示します。
対象者(物)の位置を手動で検索する位置検索型のGPS発信機もありますが、近年ではリアルタイム追跡型が主流となっています。
GPS発信機自体が一定の間隔で自動追跡するため正確な移動ルートがわかり、手動で検索する手間がかかりません。
現在地や時刻、移動ルートが自動で地図上に表示され、滞在時間なども確認できます。
位置情報の更新間隔(1分間隔、3分間隔など)を、任意で選択できるタイプのGPS発信機もあります。
GPS発信機の便利な付属機能
GPS発信機には、現在地がわかる機能の他に、次のように多様な付属機能があります。
移動履歴が保存できる
指定エリアへの出入りや速度超過などをアラート通知する
振動センサーによりスリープ開始・解除を検知する
バッテリー残量の減少を通知する
緊急時にGPS端末からSOS発信できる
ひとつずつ解説します。
移動履歴が保存できる
移動ルートが一定期間、保存される機能です。
例えば、「数時間前にいた場所を知りたい」「先週の移動ルートを知りたい」など、過去の特定の時間にいた場所を知りたいときに便利です。
位置情報が保存されるため常に画面を見ている必要がなく、後で改めて移動ルートなどを確認できるというメリットがあります。
機種やプランによって保存される期間は異なりますが、長期間のものでは1年間保存できるものもあります。
指定エリアへの出入りや速度超過などをアラート通知する
GPS発信機には、対象者(物)の動きが一定の範囲を超えた場合、即時に管理者にメールなどで知らせるアラート通知機能があります。
アラート通知には、次のようにさまざまな種類があります。
<指定エリアへの出入りを知らせる通知>
特定のエリアを設定しておくことで、対象者(物)がそのエリアに出入りした時にメールなどで通知してくれる機能です。
子供の見守りでは、自宅や学校の半径数十メートルをエリア指定しておけば、学校を出発した時や自宅に到着した時に管理者のスマホに通知されます。スマホのプッシュ通知やメールで通知されるため、常に地図上で位置を確認できない場合でも、子供の出発や到着を簡単に把握できます。
また、普段の行動範囲から出た場合にもアラート通知されるため見逃しを防げます。
<速度超過を知らせる通知>
車両に設置されたGPS発信機が速度などを検知し、走行速度が一定の基準を超えた時や急ブレーキ・急発進をした時に、管理者の端末に通知する機能です。
業務上で車両を管理している場合などに、ドライバーの危険運転をいち早く管理者が把握し警告できるため、事故の防止に有効です。
<落下・転倒を知らせる通知>
GPS発信機を持った対象者が転倒した場合に、落下を検知して指定された端末に通知する機能です。
主に高齢者を見守るGPS発信機に搭載されている機能で、高齢者の危険を離れた場所にいる家族などに即時に知らせることができます。
振動センサーによりスリープ開始・解除を検知する
GPS発信機に内蔵された振動センサーは、一定時間以上振動が検知されないとスリープ状態に入り、位置情報の発信をストップします。
そして、再び振動を検知するとスリープ状態が解除され、位置情報の発信を再開します。
同じ場所に一定時間滞在している場合に、バッテリーの消費を抑えるための機能です。スリープ機能があることでバッテリーの無駄な消費がなくなり、より長時間の稼働が可能になります。
バッテリー残量の減少を通知する
GPS発信機のバッテリー残量が一定量を下回ると、管理端末に通知されます。
充電のタイミングを逃しません。
管理サイトやアプリ上でバッテリー残量は常時確認できますが、うっかり充電を忘れてしまった場合でも残量が通知されるため、バッテリーが切れて位置情報が取得できなくなるという事態を避けられます。
緊急時にGPS端末からSOS発信できる
GPS発信機は、位置情報を送信するだけでなく、GPS発信機本体についているボタンを押すなどして管理者にSOS発信ができます。
SOS発信は位置情報とともに管理者に送信されるため、SOS発信された場所も同時に確認できます。
特に子供や高齢者の見守りなどで有効な機能です。
GPS発信機のさまざまな活用方法
GPS発信機は、その位置情報機能や多様な付属機能を利用して、現在多くの場面で利用されています。GPS発信機のさまざまな活用方法について解説します。
子供や高齢者の見守り
社員の業務管理
浮気調査・行動調査
車両管理・荷物の盗難対策
スポーツ・イベント
子供や高齢者の見守りに使える
子供の見守りでは、子供の現在地や、何時に学校を出発したのか、登下校でどのルートを通ったのかなどを自宅や職場などから確認できます。
子供の帰宅時間が遅れている場合にも居場所がわかるため、迎えに行くことも可能です。
ひとり住まいの高齢者や認知症の方の見守りでは、安否確認や徘徊時の居場所の確認ができます。自宅から出たことをすぐに知りたい場合や一定のエリアから出た場合も、事前にエリア指定しておくことで通知されるため安心です。
子供や高齢者の見守りに特化したGPS発信機は、持ち歩きやすい軽量でコンパクトなタイプが多く、SOS発信機能や相互にメッセージが送受信できる機能がついたものもあります。
社員の業務管理に使える
社用車(営業車)にGPS発信機を設置することで、外回り中の社員の居場所や移動ルートなどをオフィスや出張先から一括管理できます。
移動ルートが可視化されることで、ガソリン代などの無駄な経費が削減でき、業務の効率化にもつながります。
また、速度管理もできることから事故防止や安全管理が可能です。
浮気調査・行動調査に使える
GPS発信機を対象者の車やカバンなどに設置して、浮気調査に使用することもできます。GPS発信機を利用することで、尾行することなく対象者が行った場所・時刻、通った道、滞在時間などを確認できます。※弁護士に相談した上のご利用をお勧めします。
車で追跡する必要がある場合では、位置情報の取得が10秒~30秒に1回など更新間隔が短く精度が高いタイプが必要です。対象者の行動を正確に把握する必要があることから、GPS発信機は浮気調査には欠かせないアイテムとなっています。
また、社内不正が疑われる社員の素行調査など、対象者の行動を確認・監視する行動調査にもGPS発信機が使用されています。さらには、観光客の交通手段や宿泊状況、動線などの行動を調査することで、地域振興や観光地域の形成にも役立てられています。
車両管理・車や荷物の盗難対策に使える
送迎バスやタクシー、配送トラック、フードデリバリー、ゴミ収集車、訪問医療などさまざまな業種でGPS発信機を使った車両管理が行われています。
「いつ誰がどこにいるのか」「到着までに何分かかるか」などがリアルタイムで把握でき、詳細な走行履歴をチェックできるため、業務の可視化・効率化が見込めます。
また、車やバイクが盗難被害に遭った場合も、車体にGPS発信機を設置しておくことで追跡が可能になります。エリアを指定しておけば、車・バイクが自宅や駐車場から出た時に通知によって即時に事態を把握でき、リアルタイム追跡機能によって車・バイクがある場所を特定することも可能になります。
車やバイク以外にも、大切な荷物にGPS発信機を設置することで、盗難や紛失に備えられます。
スポーツ・イベントで使える
GPS発信機は、サッカー・ラグビー・野球・陸上競技などのスポーツ分野でも幅広く利用されています。
体にGPS発信機を装着することで、選手の走行距離や速度、加速・減速、体の傾きなどをリアルタイムで計測でき、取得したデータを元に選手のコンディション管理や戦略分析に活用できます。
近年では各地で行われる祭やマラソン大会など、各種イベントでGPS発信機が利用されることが増えています。広い面積を使って大人数が参加するイベントでも、スタッフや参加者の位置がリアルタイムで把握できるため、安全管理がしやすく緊急時にも速やかにスタッフの再配備が可能になります。
また、GPS発信機を使ったスタンプラリーや観光ガイドなども各地で開催されています。
まとめ GPS発信機の多彩な機能は多くの場面で利用できる
GPS発信機の主な機能は、リアルタイムで取得した位置情報を遠隔地にいる人に送信できるというものです。位置情報を確認するのに特別な受信機は不要で、普段使用しているスマホやパソコンがインターネットにつながっていれば良いため、誰でも手軽に利用できます。
また、GPS発信機は基本機能以外にも多様な付属機能を備えており、事故や事件の防止、業務の効率化・活性化に有効であることから現在ではあらゆる世代・業種で幅広く活用されています。
近年GPSの普及により、GPS発信機の多彩な機能は様々な場面で手軽に利用されるようになっています。